●概要
前から書きたかったんだけど、書く度にまとまらなくて結局書いたまま保留の記事に、この「自動詞と他動詞の違い」っていうお題がある。
まず、自動詞と他動詞の認識を理解すると、暗記量が減るっていうメリットを伝えたい。世間一般のテキストや英語教材が、お決まりのフレーズや熟語として紹介しているものは、結局のところ、動詞の使い方がポイントになっていたりして、それが自動詞か他動詞かっていう理解ができていれば覚える必要はなく、理解するべき問題だという事が感じられると思う。
また be動詞を含んだ熟語等は、be動詞のところが、feel とか seem とか keep とかの、いわゆる第2文型として用いる事ができる動詞に置き換わる事も多く、テストなんかで be動詞 で覚えていたばっかりに、問題に対応できなかったってこともある。本質的な理解をしないまま覚えると、逆に弊害も出てしまうのが暗記英語のマイナス点。
自動詞と他動詞っていうのは、日本語にもあるそうなんだけど、勉強不足のため理解していない。
だからここでは、英語の自動詞、他動詞について内容をまとめてみたい。自動詞と他動詞の違いっていうのは、一般的には中学で説明されると思うのだけど、おそらく90%以上は理解できないまま、中学、高校、大学を卒業する。
英語=暗記科目の人にとっては、ここは煩わしくてしょうがない部分だ。
しかしながらここを理解している人、意識を置いて勉強している人の結果、プロセス、負荷は大きく異なる。
英文法には5つの文型があるとされるが、もっと大きく分類すると、詰まる話、自動詞か他動詞か、っていうだけの話。
動詞がどう振る舞うのか(=何文型か?)、そこを軸に英文法の理解を見て行けば、英語学習の負荷はだいぶ軽くなる。だから単語を覚えるときも動詞から入るのがいいと思う。そこで文型や一緒に用いられる前置詞等を確認してしまう。文型が確認できれば、その動詞の性格みたいのも感じる事ができるようになる。
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●自動詞、他動詞の認識、違いについて
僕は英語教育は、This is a pen. からではなく、I love you. から始めるべきだと思う。
キザに決めたわけではない。本当にそう思う。This is a pen. は説明する内容が多く、be 動詞と冠詞の概念も全く易しくないから入り口として不適格。
だけど、I love you. は英語がSVO型の言語であることを説明するのに的確だし、動詞も他動詞で、名詞の前に冠詞もない。非常にシンプルで、何よりおなじみのフレーズだから入り口としてちょうどいい。
で、ここで次に話したいのは、I love you. と I fall in love with you. の違いについてだ。
● I love you.
● I fall in love with you.
この違いは、まさしく恋と愛の違いに等しい。
I love you. には、
愛する対象がダイレクトにイメージされる。しかし、
I fall in love with you. は、
相手よりも自分の気持ちがどうであるか、という説明をしている。相手の存在は二の次ということ。ちなみに、この with は「対象の with」 で、「あなたに対して」ということであって、「あなたと一緒に」という意味ではない。
I fall in love with you. は文型としては、第1文型もしくは in love を形容詞句と見るなら第2文型となる。いずれにしろ、fall の後に名詞が直接来ていない=他動詞ではない=自動詞、ということになる。
自動詞は自己完結型、という説明をされて来たと思うが、その説明でピンと来ないから、英語が暗記科目のままなのだと思う。
自動詞が自己完結である事については、日本語で考えてはいけない。なぜなら英語だからだ。
「I fall in love with you. だって対象となる相手が存在するんだけどな…」ってのは、それは日本語のロジック、理屈であって彼ら英語のロジックじゃない。
この違いは、恋と愛の違いということで理解するのがいい。恋は自分の気持ちが重要なのであって、相手は二の次だ。しかし愛するという気持ちは相手優先だ。対象に対するダイレクトな気持ち、行為、これが他動詞の意図。
他動詞、自動詞の認識とともに大事な理解が前置詞だ。
次の例文、
●I shot him.
●I shot at him.
これ、実際にピストル等の弾が確実に当たったということを説明しているのは、どちらかわかるだろうか?
正解はもちろん、他動詞として動詞 shot を用いている I shot him. のほう。
自動詞の、
I shot at him.
は、彼を狙って撃った事までは説明しているが、彼にその弾があたったかどうかまでは述べられていない。あくまで「自分が弾を撃った」ということ、行為にこの文の意図がおかれているのであって、当たったかどうかはどうでもいいことなのだ。ここらへんが、自己完結というニュアンスを説明している。
ところが I shot him. は、彼に弾が当たった事実、結果が描写されている。他動詞にはこういうダイレクトな意図が感じられる。
前置詞を挟むとニュアンスは間接的になる。それは文そのものも見ても、前置詞を挟んでいるのでダイレクトな感じは弱くなることから、感じてもらえるともう。
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●文法問題にみるリアルな間違い事例
最後に僕が間違えたTOEICの問題から、リアルな「自動詞、他動詞の認識の違い」を共有したい。
コミュニティ「TOEIC戦略会議室」より
http://q-eng.com/communityTopic/271
問題
● Midtown Hospital compares (favor/favored/favorable/favorably) with other hospitals and provides services at lower rates.
この英文の意味は、「ミッドタウン病院は地域のその他の病院と比べて優れているという評価があり、サービスも低価格で行っていますよ。」くらいの感じ。
僕は、compares は他動詞とばかり認識していたので、名詞 favor を選んだ。でも正解は副詞、favorably。
動詞 compare + 副詞 favorably + 前置詞 with + 名詞 other hospitals ってことは、動詞 compare は自動詞だったってこと。正解者がこの動詞を修飾する副詞を選べるっていう事は、この文の意図、文型を見抜けたという事。
compare の自動詞には、favorablyやpoorlyとともに用いて「〈Aと〉比較して…だ」という意味がある。favorably ということは、つまり良好な優位性を保っているということだ。
病院が主語になっていて、他の病院と行うことはおそらく比較であるのに、名詞 favor を選ぶっていうのは、つまり自動詞の compare を理解していなかったということだ。
自動詞の感覚は日本人や日本語の感覚には馴染みにくい。英語学習者が英文理解でつまづくポイントも、おそらくそのほとんどが自動詞だと思う。
●His betrayal hurts.
彼に裏切られ、傷つけられた。(傷ついた。)
●The truth hurts.
真実は傷つきやすい。
●The oranges sell for $5 a dozen.
そのオレンジは1ダース5ドルで売られている。
日本語に訳してみると、受身のような表現になりやすい事からも、日本語と英語のニュアンスのギャップが感じられると思う。
以上こういう違いを認識して、勉強すると英語の理解が深まるし、暗記も減るはず。辞書を見る時に、この自動詞と他動詞の違いを意識すると、その単語の本質的な語義も感じられると思う。
初歩的な中学単語であるほど、汎用性=日常性が高いので自動詞、他動詞ともに多くの事例があるし、中学で「覚えた」認識からすると意外性もあって興味深いと思う。
自動詞は前置詞を伴う事が多く、前置詞でニュアンスが変わるので、前置詞を理解すれば英語力が伸びやすいと思う。なにしろ1つの単語で2度おいしいのが「自動詞、他動詞の認識」だ。