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mouthbirdさんの日記

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2011年
03月16日
17:49 mouthbirdさん

この英文を簡単に感じるか?(解答編)

毎週水曜日は smart.fm で更新してきた、旧チャンネルブログの文法問題を引き続きお届けします。
今週は解答編です。

今回もチャレンジ下さった皆様、ありがとうございました。


まず、地震で被災されている方に厚くお見舞い申し上げます。
幸い、私は、パソコンのルーターを破壊された程度で済みました。


まずは問題の解答からいきますね。

問題 この英文の訳例を、辞書をいくらでも使っていいので、作ってください。
The person to whom this letter was addressed died last year.

解答例本手紙の宛先人は昨年死去

---
上の解答例は、この問題集についていた模範訳例です。あくまで例ですから、別にこれにぴったり当てはまらなければならない理由はありません。私なら「この手紙の宛先人は昨年亡くなっていた」とでも書くと思います。(模範訳が「死去」っと体言止めで終わっているのは、この英文が堅苦しい雰囲気を漂わせているためと思います)


では、解説。<(2)が最大のポイントです>

The person to whom this letter was addressed died last year.


----
(1)
この文の「骨格」は
 [The person] died last year.「その人は昨年亡くなった」
です。

この出だしの "the person" に色々説明が付いているんです。「[うんにゃらうんにゃらの)""] は昨年亡くなった」という文章なのです。つまり


 [The person(←うんにゃらうんにゃらの] died last year.
 「[うんにゃらうんにゃらの)""] は昨年亡くなった」
 [The person (to whom this letter was addressed)] died last year.
 という英文です。

================

(2)
 「[うんにゃらうんにゃらの)""]」…の部分の解説
 ここが大変!(ToT)

この部分は↓
 [The person (to whom this letter was addressed)]
ここに当たりますが、ここが一苦労。大きく2つ説明しなければなりません。

 (A)準備英文1
   I addressed this letter to the person.←この英文の意味が分かりますか?

   address という単語が(苦手な人には)厄介。
    名詞なら「住所」が普通。今回は動詞。
    動詞だと「演説する」という意味と「宛先を書く」という意味があります。
   今回は後者。「address 手紙 to」で「(手紙)を(人)宛てに出す」という意味。
   正解の1例は「私はこの手紙をその人宛に出した」です。

   では、この英文を this letter を主語にして受動態にしてみましょう

   ⇒ This letter was addressed to the person (by me).
    「この手紙は(私によって)その人宛てに出された」

   となります。

---

 (B)準備英文2
  The person (whom she loved) was Taro.
   ↑この英文の意味は分かりますか?

  正解は⇒「(彼女が愛しているは太郎だった」です。
   関係代名詞が whom(目的格)になるのは「他動詞love の目的語がない」からです。
  これが分からなかった人は「関係詞の学習」をじっくりしてください。

  では↓この意味は分かりますか?
  The person (whom this letter was addressed to) was Taro.
   ↑この英文の意味は分かりますか?

  正解は⇒「(この手紙の宛先のは太郎だった」です。
   関係代名詞が whom(目的格)になるのは「前置詞to の目的語がない」からです。

  「前置詞の目的語がない」パターンで、「関係代名詞の目的格(この英文だとwhom)が使われた場合、
   ⇒その「前置詞」を「関係代名詞」の左に持ってくることができます
  つまり、今回の英文なら to が左に移動して
  The person (whom this letter was addressed to) was Taro.
 =The person (to whom this letter was addressed) was Taro.
  …となります。
   意味はまったく同じで「(この手紙の宛先のは太郎だった」です。

====================

(3)The person (to whom this letter was addressed) was Taro.が
   「(この手紙の宛先の)人は太郎だった」…という意味ならば、

 ⇒The person (to whom this letter was addressed) died last year.
   の意味は何でしょう?
  お分かりですね。
  ⇒「(この手紙の宛先のは昨年亡くなっていた」
   となります。

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【アンケートの意図】

私は【この問題をみなさんは難しく感じるかどうか】をどうしても知りたかったのです。
というのは、これは、私自身が高校生の頃だったら、死んでも正しい訳例を作れなかったためです。

 ご存じのとおり、私は英語教師です。
 ★教師の役割は「できないことをできるようにさせる」のが役目だと思っています。


 先日、この問題をある高校1年生に出しました。この時点で私は彼女を教えて約2ヶ月目でした。彼女は英語がかなり苦手である事は分かっていました。(基本的にこういう苦手な生徒さんを教えるのが私の専門)。この英文の「訳例」を聞くにあたり、私は彼女に↓こう言いました。


 いいか、この英文はやばい。訳例作りが君にとってゲロンゲロンに難しい。最悪と言っていい。苦手な人はまずできない。これができるくらいなら君はとっくに得意だ。だからできなくて当然だ。後で解説はするが、相当に難しい。説明に時間がかかる。少なくとも40分はかかるだろう


その上で、彼女に訳例を尋ねました。彼女はまず2、3分かけてがんばって訳を作ってくださいました。その訳例は残念ながら「しっちゃかめっちゃか」でした。「手紙が死んだ」など、不可思議な訳を作ってくださいました。でもそうなるのは当然なのです。(何度も言うようだが、これができるくらいならとっくに英語は得意である)

 これをどう直し、どう納得させるかがこちらの「腕」です。上記のような説明をじっくりしました。実際はもっと細かく説明しています。(色々ヒントを与えて、自力で解けるように持っていくのです

60分後、彼女は見事に、自力「(この手紙の宛先の)人は昨年亡くなっていた」…と訳せるようになりました。私は彼女を褒め称えました。(^^) 彼女は喜んでいました。


 皆さん、この説明に60分は長いとお思いでしょうか? 人によって感じ方は異なると思います。ちなみに私は「ちっとも長くない」と思っています。それくらい「苦手な人がここを理解するのはとても難しい」


 彼女のこの後の授業で、この問題の3つ下の英文がたまたま「この文法事項を使っていた英文」でした。彼女にはその英文の訳例を尋ねました。するとどうでしょう。
 ⇒今度は、いとも簡単に「正しい訳例」を「スーーーー!!!」っと作ってくださいました!
やったね!!


何度も言いますが
 ★教師の役割は「できないことをできるようにさせる」のが役目だと思っています。
だから、こうした出来事があると、私はとても嬉しく感じるのです。


ただ、残念なことがあるのです。
英語が得意な方は、
 The person (to whom this letter was addressed) was Taro.
【苦手な人にとって「如何に高いハードルであるか」が分からない】ことが多い のです。少なくとも「説明に60分もかけるほどの問題ではない」と思えるのではないでしょうか? 自分にとってはすぐに意味が分かってしまう英文を「理解させるのに60分もかかる」とは到底思えないはずです。

 こうしたギャップが、英語が苦手な人をさらに困らせているという現状があります

 普通の英語の先生なら、この英文が「理解させるのに60分もかかる英文」とは到底思えない、したがって⇒「ここを苦手な人が満足できるほどには説明しない」、ヘタをすると全く説明しないかもしれません。「わかるよね、はい次行こう!」って言われてどんどん飛ばされかねません。

 こうして、英語が苦手な人は、こういう英文を「分からない」まま、放って置かれます。つまり「できないまま」にされるわけ です。で、試験で悪い点を取ると「勉強が足りん!」と言われるのです。

 理不尽だと思いませんか?

 そうされ続けて中学高校時代を過ごし、英語で学年最低点などを記録し続けて、「英語がこの世で1番嫌いになった人間」の1人が、他ならぬ「」です。


★蛇足:例に挙げた高校1年生ですが、ここの例の後半の人です。子供を小学校から英会話学校に通わせたいと思っていらっしゃらる親御さんがいらしたならば、ぜひご一読くださればと思います。


いかがだったでしょうか?
それではまた来週!

問題編
http://q-eng.com/diary/878

出典
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コメント

1番~6番を表示

2011年
03月16日
20:11
popoyuriさん

つまづくところをわかってくれる先生は貴重!
どこがわかんないの?って聞かれても、全部単語だけなら訳せるのに、文章にすることができなくて、情けなくてこんがらがっているなんてなかなか言い出せない。
わからなさ加減すら説明できない。

60分、かけた甲斐がありましたね。
その後に応用できたってことは、自分で考えることができるようになったってことですもんね。

・・・くー。
相変わらず、文法は私にやさしくないですが、頑張ります(`・ω・´)

2011年
03月16日
23:48
ken14さん

Mouthbird先生
 今週もありがとうございます。
 私は person to whom と the letter was addressed のところが引っかかってしまいまして、そこを理解するのに時間がかかってしまいました。 ある意味では狙い通り?でしょうか。
 丁寧な説明ありがとうございました。おかげででよく分かりました。
皆さん同様、すぐに理解できればいいのですが、
どうしても時間がかかってしまいます。
 又来週の問題楽しみにしています。地震は揺れを感じましたが、たいしたことはありませんでした。ありがとうございます。

2011年
03月17日
20:56
たっつんさん

 たしかに。ここは大きな分岐点ですね。関係詞そのものも分岐点ですが、このto whomは消化が悪いこと、この上ない。TOEICでも頻出パターンですね。
 そういうヤバさに共感を持って、問題に挑めるmouthbird先生の役割、存在意義はとても大きいです。

 数学に置き換えると、そこの式はなんでそうなるの、ってのが解説読んでもわからないっていう状態だと思います。でも解説は「え、こんなの当たり前だろ?」みたいな感じで、解説しないんですよね。ページも限られているのかして。

 こういう時のために、先生とか塾講師っているんですよね。塾講師や先生は、つまづいている時間の無駄を減らす役割をしているんですね。

 英文は僕も、高校生だったら「まったく手が出ない」っていうところです。ここを60分かけて説明するのは、mouthbird先生以外にいないでしょうね。

僕だったら、どう教えるかな?
最近、高校受験英語を教えるどこかの塾講師が、to不定詞の活用を教えていたのを見ました。副詞や形容詞が何なのかから説明しているのを見て「あ、やっぱ教えるのって難しいんだな。」って思いました。「副詞は形容詞を説明する」って言っても相手は中学生ですから、生徒によっては、「で、その副詞ってどれ? 形容詞ってどれ? てゆうか副詞って何?」っていうことになるわけですよね。
 概念的な説明では理解されない時に、どう言えば伝わるのか、技量が問われるところですよね。

 僕だったら、その例文は、状況を日本語で説明して、「もし君が、郵便屋さんだったら、なんて報告する?」って日本語で応答するところから始めてみますね。
 で、まず日本語の構造から、修飾関係を中心に説明しますね。

 このto whom や in which, during which 等の前置詞+関係詞はあまり話し言葉では使われないと思いますが、記述ではある程度見受けられると思います。
 僕が思うのは、彼らnativeは、the personを書いた時点で、もう頭の中には to whom this letter was addressed がセットで存在しているってことですよね。この感覚がしっくりくるか、こないかってのは使うなり、問題を解くなりの「慣れ」ですね。
 この思考回路は、すぐにはできないですね。

2011年
03月18日
08:24
MihoGさん

よぉ~く分かります。私も日本語を教えていて、同じような場面に出会います。
特に相手はアメリカ人なのでそういった細やかな事を英語でコミュニケーションをとらなくてはいけないので大変です。でも、そこを頑張ってコミュニケーションをとっていくとどんどん教え上手になっていきます。私もいろいろ学んでいます。

マウスバード先生の英語の教え方は、文法が苦手な私でもとても分かりやすいです。
いつもありがとうゴザイマス!!!!ぴかぴか(新しい)

2011年
03月18日
10:25
hadaさん

解説ありがとうございます。

英文を理解するときの一番の難しさは、どこまでがひとつの塊になるのか見えてこないことにあるのかもしれませんね。 ちなみに popoyuriさんの書かれている、単語だけはわかるんだけど…という話は今でもたっぷり味わっています。(^^;

地震はわずかに揺れたぐらいで何も被害はありませんでした。お気づかいありがとうございます。

2011年
03月22日
18:29
mouthbirdさん

>popoyuriさん
 私はあらゆるところで全部つまずきましたからね~(つまずいていないと場所を探すほうが難しい)
 たとえ単語の意味が全て分かっていても、文章全体の意味が分からない場合が多い人こそ、英語が苦手な人です。あるいは「ある1つの単語が多義語で、どの意味か分からない」というようなケースもあります。得意な人の場合はなぜかそうなりません。「経験から来るカン・国語力などで」分かってしまうケースが多いのです。で、そう人ばかりが普通英語の先生になるのです。したがって普通の英語の先生は、英語が苦手な人がなぜ、どこでつまずくか、まず知らないのです。
 英文法知識があると、苦手な人でもできるのです。経験や国語力がなくてもできるのです。これが私が主張する「苦手な人ほど文法が必要だ(得意な人ほどいらない)」という意見の根拠になっています。
 彼女は私のこのときの授業で「何かを得た」ようです。このあと関係詞の問題は割りとスムースに「自力で」訳を作れるようになりました。文法学習がやりにくかったら、いつでも私にご相談ください(^^)

>ken14さん
狙い通りです。(^^) 苦手な人の場合、ここはそんな簡単にいかないのです。分かられたようで嬉しく思います。地震の影響も少なかったようですね。良かったです。

>tattsun999さん
 関係詞自体が、英語が苦手な人の最大のネックです。その上に今回は受動態が絡んで、address が絡んで、前置詞+関係代名詞が絡んで…という最悪な問題でした。しかもこの生徒さんは「受動態が苦手」なのです。そこの説明もしなければならず、時間がかかったのです。
 学校では手が回らないでしょう。参考書もそうですね。なかなか1問1問丁寧な説明がある文法問題集は少ないでしょう。こういう「苦手な人がつまずく問題」こそ私の出番。私の場合「ここで絶対につまずく」ということも分かっているし、直し方も分かるのです。
 もう1つ知ってます。それは「同じ高校1年生でも、ここでつまずかずにわずか10秒で訳が完璧にできる英語が得意な人もいる」ということです。このギャップが恐ろしい。つまずかない人の存在がつまずく人をどれだけ恐怖に恐れおののかせるか。理解に60分もかかる問題が「わずか10秒でできてしまう高校生1年生がいる」…ということが苦手な人にとっていかに恐怖か…。得意な人にはわからないと思います。

>MihoGさん
MihoGさんは日本語教師でいらっしゃいましたね。少しずつ説明上手になっているようですね。私の説明を分かりやすい、思っていただき嬉しいです。良かったです。

>hadaさん
単語だけはわかるが読めない、というケースが多いとおっしゃっていますが、この問題はhadaさんはできました。もっとも高1のときはできなかったようで…つまり学習の成果が現れていると思います。塊が見えるようになるために、苦手な人は文法知識が不可欠と思います。

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