毎週水曜日は smart.fm で更新してきた、
旧チャンネルブログの文法問題を引き続きお届けします。
今週は解答編です。
今回もチャレンジ下さった皆様、ありがとうございました。
まず、
地震で被災されている方に厚くお見舞い申し上げます。
幸い、私は、パソコンのルーターを破壊された程度で済みました。
まずは問題の解答からいきますね。
問題 この英文の
訳例を、辞書をいくらでも使っていいので、作ってください。
The person to whom this letter was addressed died last year.
解答例:
本手紙の宛先人は昨年死去。
---
上の解答例は、この問題集についていた模範訳例です。あくまで例ですから、別にこれにぴったり当てはまらなければならない理由はありません。私なら「
この手紙の宛先人は昨年亡くなっていた」とでも書くと思います。(模範訳が「死去」っと体言止めで終わっているのは、この英文が堅苦しい雰囲気を漂わせているためと思います)
では、解説。<(2)が最大のポイントです>
The person to whom this letter was addressed died last year.
----
(1)
この文の「骨格」は
[The person] died last year.「その人は昨年亡くなった」
です。
この出だしの "
the person" に色々説明が付いているんです。「
[(
うんにゃらうんにゃらの)"
人"
] は昨年亡くなった」という文章なのです。つまり
[The person(←
うんにゃらうんにゃらの)
] died last year.
「
[(
うんにゃらうんにゃらの)"
人"
] は昨年亡くなった」
[The person (
to whom this letter was addressed)
] died last year.
という英文です。
================
(2)
「
[(
うんにゃらうんにゃらの)"
人"
]」…の部分の解説
ここが大変!(ToT)
この部分は↓
[The person (
to whom this letter was addressed)
]
ここに当たりますが、ここが一苦労。大きく2つ説明しなければなりません。
(A)準備英文1
I addressed this letter to the person.←この英文の意味が分かりますか?
address という単語が(苦手な人には)厄介。
名詞なら「住所」が普通。今回は動詞。
動詞だと「演説する」という意味と「宛先を書く」という意味があります。
今回は後者。「
address 手紙 to 人」で
「(手紙)を(人)宛てに出す」という意味。
正解の1例は「私はこの手紙をその人宛に出した」です。
では、
この英文を this letter を主語にして受動態にしてみましょう。
⇒
This letter was addressed to the person (by me).
「この手紙は(私によって)その人宛てに出された」
となります。
---
(B)準備英文2
The person (
whom she loved) was Taro.
↑この英文の意味は分かりますか?
正解は⇒「(
彼女が愛している)
人は太郎だった」です。
関係代名詞が whom(目的格)になるのは「
他動詞love の目的語がない」からです。
これが分からなかった人は
「関係詞の学習」をじっくりしてください。
では↓この意味は分かりますか?
The person (
whom this letter was addressed to) was Taro.
↑この英文の意味は分かりますか?
正解は⇒「(
この手紙の宛先の)
人は太郎だった」です。
関係代名詞が whom(目的格)になるのは「
前置詞to の目的語がない」からです。
「前置詞の目的語がない」パターンで、「関係代名詞の目的格(この英文だとwhom)が使われた場合、
⇒
その「前置詞」を「関係代名詞」の左に持ってくることができます。
つまり、今回の英文なら
to が左に移動して
The person (
whom this letter was addressed to) was Taro.
=
The person (
to whom this letter was addressed) was Taro.
…となります。
意味はまったく同じで「(
この手紙の宛先の)
人は太郎だった」です。
====================
(3)
The person (
to whom this letter was addressed)
was Taro.が
「(この手紙の宛先の)人は太郎だった」…という意味ならば、
⇒
The person (
to whom this letter was addressed)
died last year.
の意味は何でしょう?
お分かりですね。
⇒「(
この手紙の宛先の)
人は昨年亡くなっていた」
となります。
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【アンケートの意図】
私は【この問題をみなさんは難しく感じるかどうか】をどうしても知りたかったのです。
というのは、これは、
私自身が高校生の頃だったら、死んでも正しい訳例を作れなかったためです。
ご存じのとおり、私は英語教師です。
★
教師の役割は「できないことをできるようにさせる」のが役目だと思っています。
先日、この問題をある
高校1年生に出しました。この時点で私は彼女を教えて約2ヶ月目でした。
彼女は英語がかなり苦手である事は分かっていました。(基本的にこういう苦手な生徒さんを教えるのが私の専門)。この英文の「訳例」を聞くにあたり、私は彼女に↓こう言いました。
「いいか、
この英文はやばい。訳例作りが君にとってゲロンゲロンに難しい。最悪と言っていい。苦手な人はまずできない。
これができるくらいなら君はとっくに得意だ。だからできなくて当然だ。後で解説はするが、相当に難しい。
説明に時間がかかる。少なくとも40分はかかるだろう」
その上で、彼女に訳例を尋ねました。彼女はまず2、3分かけてがんばって訳を作ってくださいました。
その訳例は残念ながら「しっちゃかめっちゃか」でした。「手紙が死んだ」など、不可思議な訳を作ってくださいました。でもそうなるのは当然なのです。(何度も言うようだが、これができるくらいならとっくに英語は得意である)
これをどう直し、
どう納得させるかがこちらの「腕」です。上記のような説明をじっくりしました。実際はもっと細かく説明しています。(
色々ヒントを与えて、自力で解けるように持っていくのです)
60分後、
彼女は見事に、
自力で
「(この手紙の宛先の)人は昨年亡くなっていた」…と訳せるようになりました。
私は彼女を褒め称えました。(^^) 彼女は喜んでいました。
皆さん、この説明に60分は長いとお思いでしょうか? 人によって感じ方は異なると思います。ちなみに私は「ちっとも長くない」と思っています。それくらい
「苦手な人がここを理解するのはとても難しい」。
彼女のこの後の授業で、この問題の3つ下の英文がたまたま「
この文法事項を使っていた英文」でした。彼女にはその英文の訳例を尋ねました。するとどうでしょう。
⇒
今度は、いとも簡単に「正しい訳例」を「スーーーー!!!」っと作ってくださいました!
やったね!!
何度も言いますが
★教師の役割は「できないことをできるようにさせる」のが役目だと思っています。
だから、こうした出来事があると、私はとても嬉しく感じるのです。
ただ、残念なことがあるのです。
英語が得意な方は、
The person (to whom this letter was addressed) was Taro.
が、
【苦手な人にとって「如何に高いハードルであるか」が分からない】ことが多い のです。少なくとも「説明に60分もかけるほどの問題ではない」と思えるのではないでしょうか? 自分にとってはすぐに意味が分かってしまう英文を「理解させるのに60分もかかる」とは到底思えないはずです。
こうしたギャップが、英語が苦手な人をさらに困らせているという現状があります。
普通の英語の先生なら、この英文が「理解させるのに60分もかかる英文」とは到底思えない、したがって⇒「ここを苦手な人が満足できるほどには説明しない」、ヘタをすると全く説明しないかもしれません。「わかるよね、はい次行こう!」って言われてどんどん飛ばされかねません。
こうして、
英語が苦手な人は、こういう英文を「分からない」まま、放って置かれます。つまり
「できないまま」にされるわけ です。で、試験で悪い点を取ると「勉強が足りん!」と言われるのです。
理不尽だと思いませんか?
そうされ続けて中学高校時代を過ごし、英語で学年最低点などを記録し続けて、「
英語がこの世で1番嫌いになった人間」の1人が、他ならぬ「
私」です。
★蛇足:例に挙げた高校1年生ですが、
ここの例の後半の人です。子供を小学校から英会話学校に通わせたいと思っていらっしゃらる親御さんがいらしたならば、ぜひご一読くださればと思います。
いかがだったでしょうか?
それではまた来週!
問題編
http://q-eng.com/diary/878
出典
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