去年の4月、娘の毛蟹が遠く離れたN市の大学に合格し家を出て行った。
娘にだけなついていた我が家のマルチーズ、ちびマルこ。メス、11歳。体重2.5kg。
コイツは私と夫には、目が合うと唸る、触ると吠える、抱くと殺されそうな声で吠えまくる。夫が毎晩会社から帰ってくると、家に入れまいとワンワン吠え、足を抑え、時にはズボンを噛み、夫の足を踏み、あらゆる手段に訴える。
私はいつも言っていた。
「あ~あ。触り放題、抱っこし放題のかわいい犬が欲しかったなあ。」
それが、毛蟹がいなくなってから、私が触っても抱いてもうならなくなった。うふうふ。かわいい。やっぱりペットはこうでなくちゃ。
しかし、相変わらず夫に対しては、うなる、吠える、触らせない。毎晩のお出迎えも変わらない。
夫が隣に座ってテレビを見ている時、私はちびマルこを抱き上げ、撫で撫でする。
「見て見て。可愛いでしょ。うならないよ。うふうふ。」
夫はすねながら言う。
「いいなあ。・・・・・ねえ、ちびちゃん。」
夫は手を出して触ろうとする。すると、ちびマル、夫に牙をむき出してうなり始める。
「えーん。どうして?どうしてお父さんにはダメなの?」
夫はちびマルに言う。
「ちびマルはお母さんが好きなんだもんね。お父さんは小さい時に意地悪したから嫌いなんだもんね。うふうふ。」
私は優越感に浸りながらちびマルを撫でる。ちびマルは気持ちよさそうにしている。
うふうふ。
一番好きだった毛蟹がいなくなったから、ちびマルのしもべの私は格上げされたのかしら。
でも、お父さんの地位は上がらなかったのね。うふうふ。
今日もお父さんは、ちびマルに手を出しては唸られている。
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