「アンクル・トムの小屋」の馬バージョンだとも言われているこの作品、子どもの頃に『黒馬物語』として翻訳版を読んだことがある。Kindleで無料だったので、読んでみた。
主人公(語り手)は黒馬で、生まれて時から晩年までの人生(馬生?)が綴られている。
思いやりのある飼い主、誠実な馬屋番のいる牧場で生まれ、しあわせな子ども時代を送ったBlack Beauty なので、穏やかで従順な性質を持つ美しい黒馬。
その後、譲られたり売られたりして、いろいろな持ち主の下でいろいろな扱いを受け、いろいろな仕事をさせられ、いろいろな馬や人に出会っていく。
馬を友達のように大切に扱う人もいれば、モノ扱いしてムチを当てて無理やり働かせる人もいる。見栄えがいいからと、馬の首を高く引き上げたまま走らせるという、馬にとって辛いやり方を強いる人。無知から、馬の蹄鉄に小石が挟まったのに気づかず、大怪我になるまでそのまま走らせてしまった人。
出会いと別れ、つらい生活としあわせな生活。馬は人間に言葉で訴えることができないから、人間のほうが気をつけて馬の体調や気持ちを考えてやらなければならない。馬の立場から見ているので、いつの間にか馬に感情移入して読んでいった。
同じ馬屋にいて親しい友達になった雌馬のGingerとの悲しい再会。気性が激しく、自尊心の高かった美しいGingerが見る影もなくみすぼらしくなって、目からは光が消えていた。使い捨てのようにボロボロになるまで働かされて、早く死にたいと願っていた。そして本当に間もなく死んだ様子。これには思わず涙。
Black Beautyも、晩年はひどい扱いを受け、辛い仕事を強いられ、ついに倒れて、そのまま死ぬんだと思ったBlack Beauty だが、なんとか息を吹き返して二束三文で売られ、そこで十分休養をとって回復させて次の飼い主候補のところへ連れて行かれた。
なんとそこで、幸せだった昔の馬屋番(当時の見習いの少年)と再会することになる。この幸せな結末は、しっかり覚えていたのだが、それでも感動して涙が止まらなかった。
“・・・・・It must be Black Beauty! Why, Beauty! Beauty! Do you know me? Little Joe Green, that almost killed you?”
未熟だったために、汗だくで帰ってきたBlack Beautyの処置を間違って、病気にさせてしまったかつての少年Joeは、髭をたくわえた立派な馬屋番になっていた。
自動車もなかった昔の話で、馬の装具や扱い方など、私にはわかりにくい表現も多かったが、読み進めるうちに少しは馬に詳しくなった気がする。
児童書だからそれほど難しくなかった。そして、児童書だけれど大人にも十分読みごたえのある内容だった。
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