ちびマルのカットはいつも私がやっていた。
最初の頃はペットショップに連れて行っていたのだが、意外に虎刈りで、
「なんだ。プロの仕事ってこんなものか・・・。これくらいなら私にもできるわ・・・。」
と、5,000円の価値を感じられなかったので、それ以来私がやっていた。
もちろんもっと虎刈りだ。でも「、素人だもん。」と、開き直る。
カットって大変なんだよ。1時間くらいかかってしまう。シャンプーもすると合計2時間くらいかかってしまう。
お風呂場に新聞紙を敷き詰め丸椅子を置いて、その上にちびマルを乗せて、私はしゃがんだり中腰になったりしてカットをする。これがアラカンのおばさんの腰にはこたえるんだな~。だから母はなかなかちびマルのカット&シャンプーをやらない。
去年の11月に発作を起こして、動物病院の先生に、
「ストレスがかかるから、シャンプーとかあまりしないでください。」
と、言われ、母は「ちびマルのため」という大義名分を掲げ、カットとシャンプーをさぼって、いや、控えてきた。しかし、さすがに、臭い汚い。もう限界だ。初夏のある日、私は意を決してちびマルのカットとシャンプーをすることにした。
ちびマルはカットとシャンプーが大嫌いだ。時々お母さんにハサミでいろんなところを余分にカットされて「キャン!」と悲鳴を上げているからね。ゴメンね。だから、ハサミやバリカンや櫛の入った袋を私が持つだけで、キャリーの中に逃げ込んでしまう。
しかし!ちびマルよ。
このキャリーは天井がパカッと外から開けられるんだなあ。どんなに奥に逃げ込んでも、お母さんは上からお前を簡単に捕獲することができるんだなあ。ハハハ。
笑っていられるのはここまでだ。母の苦戦はここから始まる。
おなかや足をカットしようとすると、敵もさる者、足を内側にしまい込んで腹這いになってしまう。
お尻のあたりや尻尾をカットしていると、何やら、お尻からウニュ~っとうんちが!!!目の前にうんちが!!!
これは絶対に私への抵抗だな。
うんちをトイレットペーパーにくるんでトイレに捨てに行く間、椅子から落ちると大変なので、床の新聞紙の上に降ろしていく。トイレから戻ってくると、そこにはおしっこの湖がー!!
これも絶対に私への抵抗だな。
ちびマルを再び丸椅子に乗せ、湖ができた新聞紙を丸めている間に、何やら視界の隅で、椅子の上から黒い塊がポトンと新聞紙の上に落ちていく。
え・・?まさか・・・?
うう・・。またもや、うんちである。まだおなかに溜めてたの?
ああ・・・・。しかしここで力尽きるわけにはいかない。ここでやめたら、臭くて薄汚れたジャケットのフードに付いているフェイクファーにしか見えない。
目の周りをカットしようとすると、今度はブイ!ブイ!と顔を振る。
怖いよー。それはやめておくれ。
鼻の周りや口の周りをカットしようとすると、舌をペロペロ出す。
怖いよー。それもやめておくれ。
耳のカットも怖いんだな。耳を切らないように注意しながらカットする。
あらら???
耳に毛が無い?耳の先っちょしか毛が無い・・・?今まではふさふさしてたのに。
背中や尻尾の毛が、最近少なくなったな、病気したからかな、歳だからかな、と思っていたが、耳も毛が無くなっていたんだね。
カットするともっとけが少ないのが分かって、ああ、結構しょぼい犬になってしまった。
ちびマルは12歳。人間でいうと63歳だそうだ。お互いにアラカン。薄毛に悩むお年頃。
そのあと、シャンプーをした。シャンプーするとき、いつも思う。体は洗えるけれど、顔はシャンプーで洗えない。お湯で濡らしたタオルでふくだけなのだが、汚れてくさいのは顔なんだよね。
乾かしている時、あらら?耳たぶが1枚じゃない?あら?ららら・・?変な形に切れ込みがある・・・。あらー!私、耳を切っちゃったかしら(ゾゾゾー)。どうしよう。でも、ちびマル、キャンともスンとも言わなかったよね?痛くなかったのに切っちゃった???
翌日、動物病院に連れて行ったとき、先生に聞いた。
「先生、私、耳を切っちゃったのでしょうか?耳のここが切れてるみたいで・・・・」
と、恐る恐る尋ねると、
「ああ、ここね。こういう形なんです。人間も、耳って複雑な形をしているでしょ。それと同じです。」
と、簡単に言われた。
あー。よかった。
その晩、ちびマルが腹這いで寝ているのを上から写メを撮って毛蟹に送った。
「ちびマルをシャンプーしたよ。首から下が輝いてるでしょ。あー。でも、写真じゃわからないかな。」
毛蟹から返事が来た。
「はっきりわかるわー。w」
うふ。
ちびマル。ふかふかで気持ちいい。
ちびマルが嫌がって唸っても、飼い主の特権を行使してちびマルを抱きしめる。
うへ。顔は臭い。
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