ちびマルは去年の11月から3種類の薬を飲んでいた。心臓の薬、利尿剤などである。
生まれつき心臓が弱いので、「今は薬で心臓を動かしていますから決して薬を勝手にやめないでくださいね、それからストレスに気を付けて」、と、動物病院の先生に言われていた。
ストレス・・・これが問題だ。何しろ、薬を無理やり飲ませるのもストレスになるから、と言われていた。
しかしーーー!
ちびマルは薬が嫌いで飲んでくれない。
クッキーを砕いてそれに混ぜて食べさせようとしたり、好きな納豆に混ぜて食べさせたり。しかし、これも回数を重ねると食べてくれなくなる。
焼き芋やバナナにくるんで食べさせたりもした。最初の1回は食べる。しかし2回目からは、クンクンと匂いを嗅いで、食べずに行ってしまう。
仕方なく、粉にして大好きなヨーグルトに混ぜ、指につけてちびマルの上あごに擦り付ける。
これがまた大変だ。ちびマルに指をかまれるのだ。だから、左手の指に布を巻き、それでちびマルの口を開け、右手の人差指に薬ヨーグルトを付けちびマルの口に入れよとするが、顔をブイブイ振って抵抗する。私の左手を噛む。それでもなんとか上あごに薬を擦り付けるが、あまりに抵抗がひどくて、歯を1本抜いてしまったのか、口が血まみれになったこともあった。
動物病院の先生にその話をすると、
「うーん。それもかなりのストレスですね・・・・。」
と言われた。
私はどうしたらいいの?飲ませなければ死んでしまうかも。飲ませようとすれば心臓に負担がかかる。
あの手この手を考え、混ぜる食べ物をいろいろ変え、いろいろ努力した。
熱いと心臓に負担がかかる。だから、室温計とちびマルの呼吸の様子を見ながらクーラーを入れる。
私も夫もクーラーをあまりつけない。毎年、台風の日や30度を超える日くらいしか入れないのだが、今年は27度くらいになるとちびマルの呼吸が荒くなるのですぐクーラーを入れた。
出かける日は朝からクーラーを入れ、部屋のドアを開け、ちびマルが自分の好きな場所で寝られるようにした。
クーラーを入れると途端にちびマルの呼吸が楽そうになる。室温1度でこんなに違うのか、と思った。
夏になるとちびマルは食欲がなくなった。そのたびにドッグフードを変えた。ヨーカドーの高齢犬用のドッグフードを片っ端から買った。おやつもいろいろ買った。でも、なかなか食べてくれない。
鳥の胸肉を蒸して食べさせた。最初はすごい勢いで食べたが、この魔力はすぐに切れてやはりすぐに飽きられた。
夫は毎日納豆ともずくで文句を言わずに食べるのに、ちびマル様はしょっちゅうお食事を変えても母の努力を認めてくれない。あ~あ・・・。
外にも行きたがらなくなった。涼しい時間に外に出しても、一歩も動かず腹這いになってしまう。
1日をほとんど寝て過ごすようになった。
2週間で2.5キロの体重が2.3キロに落ちてしまった。
「どんどん好きなだけ食べさせてください。」
と、お医者さんに言われた。
もう、破れかぶれだ。プリン、シュークリームを買ってきた。
プリンなら喜ぶだろう。と、思ったら、鼻を近づけただけで見向きもしなかった。シュークリームも同様だった。
そんな時、毛蟹がしばらくぶりに帰ってきた。動きもゆっくりになったちびマルを見て毛蟹が言った。
「あとどのくらい元気でいるかな。今度お姉ちゃんが帰ってくるまで生きててくれるかな・・・。」
「大丈夫だよ。ま、あと10年は無理だろうけど。ははは。」
と笑いながら私が言うと、
「10年なんて無理に決まってるじゃない。」
と、夫が真面目に答えた。
全くユーモアのない人間である。半年とか1年とか言ったら現実的で毛蟹がテンション落ちるから、こちらは10年と言っているのに。
数日後、毛蟹はこれが最後かもしれないね、と、ちびマルを撫でて帰って行った。
塩分が気になったがハムやローストビーフを食べさせるとすごい勢いで食べてくれた。それから数日間、ローストビーフとハムと塩麹漬けの鳥の胸肉を食べさせた。
そのうち食欲が回復し、心配するほどドッグフードを食べ始めた。
ちびマル、よかったね。以前は太りすぎないように餌を制限されていて、しょっちゅうごみ箱をあさっていたのに、今は好きなだけ食べていいんだよ。食っちゃ寝、食っちゃ寝の理想の生活でしょ?
2週間後、病院に行ったら、
「体重が増えましたね。2.5だ。」
と、言われた。良かった~。食べなければ痩せる、食べれば太る。うーん。はっきりわかるわ。
毛蟹にメールを送った。
「ちびマル、体重が増えたよ。」
毛蟹から返信が来た。
「ちびマルちゃん、やつれて大変だと思っていたら、まさかの体重増ですか。お姉ちゃんは痩せられないのにw」
痩せられないのは母も同じです。特にこの暑さでは、アイスクリームが必需品です。
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