Q-Eng

私が実家に行くと、母はまず、私の足の先から頭まで、ジロッとチェックする。

「あら、そのスカート良いわね。」
「そのバッグいいわね。お母さんもそういうの欲しいわ。」
「そのカーディガンいいわね。あーすはいつもいい物見つけるわね。どこで買ったの。」
等々。
しかし、母の事である。褒めてばかりではない。

母　「なに？そのスカート。お母さんが買ってきたのに、はき替えなさい。」
私　（あーあ。春だから、クリームに小花の散ったスカートをはいてきたのに。このお母さんの茶色いスカートなんて・・・・泣）。」

母　「なに？その頭。変な格好ね。」
私　（あーあ。自分では夜会巻きが上手にできたと思ってるのに。）

母　「なに？また新しい帯揚げ買ったの？同じような安物ばっかり買ってるんだから（怒）」
私　（あーあ。お母さんは、しょっちゅう私の箪笥から、私の帯揚げを勝手に持って行って使っているのに。）
（注）　私は着物を実家に置いている。なぜって私の家に着物を置くスペースが無いからである。実家は私の家から車で１５分である。

ま、とにかく、そういう母と買い物に行った。
母　「お母さん、服が欲しいわ。最近服を買ってないの。」
私　「お母さんが着るのなら、あっちのコーナーね。」
母　「良いの無いわね。」
私　「じゃあ、あっちに専門店がいくつかあるよ。」
母　「・・・・良いの無いわね。」
私　「あっちのお店の方が、すこしお母さんの年代向けの服が多いと思うからあっちに行こう。」

母はそのお店に入って行った。

私　「これどう？スカートとブラウスとジャケットの３点セットでこの値段よ。」
母　「そうね。」
私　「ちょっとこの胸の花のアップリケが私の好みじゃないけど。でも、軽くてたたむと小さくなるから旅行に行く時良いんじゃない？」
店員　「いらっしゃいませ。」
母　「この子がこのお店はおばば向きだからって言うから来たの。」
私　（エー！言ってないよ！！！そんなひどい事言ってないよ！）
店員さん、笑っている。
ごめんなさい、店員さん。私、そんなこと言ってません。私はそんなひどい人間じゃありません！私は無実です！
店員　「今ご覧になっているそのセット、お似合いだと思いますよ。」
母　「この子が、この飾りがダサいって言ってるの。」
私　（エー！言ってないよ！！！そんなひどい事言ってないよ！）
店員さん、笑っている。
ごめんなさい、店員さん。私、そんなこと言ってません。私はそんなひどい人間じゃありません！私は無実です！
ああ、もう、私このお店から出て行きたい！
店員　「ご試着なさいませんか？」
母　「いいわ。これ貰うわ。」
店員　「ご試着なさらなくてもいいんですか？」
母　「ええ。いいわ。私に入らなければこの子が着るから。」
私　（エー！やだよ。この服、私の好みじゃないって言ったじゃない！）

母はその服を買ったが、ちゃんと着られたので、とりあえず私はその服を着なくて済んでいる。