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今まさに「関係代名詞の不正確な使い方」のために国際問題になっている
今日は先週の「関係詞の問題」の解答と解説を行う日だ。でもその前に関係詞がらみのタイムリーな話を手に入れたので、先にこれを日記にする。
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衆議院選挙で圧勝した民主党。その党首「鳩山由紀夫」の話が国際問題になっている。
Yahooニュース(産経新聞)
米主要紙、鳩山氏の対米姿勢に相次ぎ懸念
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090902-00000511-san-int
↑
この文頭の部分を引用すると
「米国の2大主要紙であるワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズは1日、日本の総選挙を圧勝に導いた民主党の鳩山由紀夫代表に関する社説を一斉に掲載し、同氏の対米姿勢に強い懸念を表明した」
とある。
実はニューヨーク・タイムズの記事の中には「誤訳」によって問題となっている部分がある。英訳者は原文の「制限用法の関係代名詞」の部分を、わざわざ「非制限用法の関係代名詞」に書き換えて、文意を捻じ曲げていると思われる。
どう捻じ曲げられているのかを説明したい。
まず、関係代名詞の「制限用法」と「非制限用法」の違いを説明する。
ようは「,(カンマ)」があるかないかの差なのだが、この所為で大きく意味がズレる場合がある。
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●制限用法(カンマがない)
He had two sons who became musicians.
(彼には音楽家になった2人の息子がいた)
(音楽家にならなかった息子が他にいる可能性がある)
●非制限用法(カンマがある)
He had two sons, who became musicians.
(彼には2人の息子がいて、2人とも音楽家になった)
(息子は2人しかおらす、音楽家にならなかった息子が他にいる可能性が全くない)
―――
この差がどう影響するか? 確かにこの例ではたいした差が生まれないような気もする。
しかし次の「笑える例」を見てみよう。(「実力完成 問題集 英文法」相原仁郎著 開拓社 p29のコラムから引用。分かりやすいように若干修正)
・コンマひとつで裸になった牧師のお話
ふだん牧師服を着るのが嫌いな牧師が、ある日
"I will wear no cloths which distinguish me from fellow-men."
(私は、一般教徒と区別するような服は着ないようにしよう)
と宣言した。
ところがこのことばが新聞に報道されたとき、どういうわけか which の前に誤ってコンマがはいってしまった。非制限用法の関係代名詞になったため
"I will wear no cloths, which distinguish me from fellow-men."
(私は服を着ないようにしよう、そうすれば一般教徒と私が区別される)
という意味になり、みずから「裸の王様」ならぬ「裸の牧師」を宣言してしまったことになった。
↑
これは笑えるからまだいい。(当の牧師にとっては笑えないだろうが)
今回の鳩山氏関係のニュースは笑えないものであると思う。
―――
まず前提。
鳩山氏は自身のサイトで「私の政治哲学」という文章を発表している。
これは雑誌 voice の9月号に発表されたものである。
↓長いので、きちんと読む場合は覚悟しましょう。
http://www.hatoyama.gr.jp/masscomm/090810.html
このvoiceに発表された文章には英訳がある(↑このページの最後にリンクがある(wordファイル))
この鳩山氏の(日本語の)文面の中で
「道義と節度を喪失した金融資本主義、市場至上主義にいかにして歯止めをかけ、国民経済と国民生活を守っていくか。」
という部分がある。
鳩山氏のサイトのwordファイルにある「公式英訳」の該当部の英語は以下。
How can we put an end to unrestrained market fundamentalism and financial capitalism that are void of morals or moderation in order to protect the finances and livelihoods of our citizens?
この部分↓に着目してもらいたい。関係代名詞の that が使われている部分である。
unrestrained market fundamentalism and financial capitalism that are void of morals or moderation
↑ここの意味は「道義と節度を喪失した金融資本主義、市場至上主義」である。
that の手前にはカンマがない。つまり「制限用法」である。(★通常、関係代名詞のthat には「カンマを付けた非制限用法」では使われない!)
制限用法だから「道義と節度を喪失していない金融資本主義、市場至上主義」もありえるわけだ!(音楽家になっていない息子がいる可能性があるのと同じように)
鳩山氏の意図は
「道義と節度を喪失していない金融資本主義、市場至上主義の構築」にあることを示している英文である。
ところが!
ニューヨーク・タイムズの記事は、「ここを引用+改変したと思われる箇所」が、次のような英文になっている。
How can we put an end to unrestrained market fundamentalism and financial capitalism, that are void of morals or moderation, in order to protect the finances and livelihoods of our citizens?
太字の部分が今回の最大のポイントである。
通常使わないはずの「that の非制限用法」にわざわざ変えている!
非制限用法のため、この英文の意味は
「国民経済と国民生活を守るために、金融資本主義と市場至上主義にいかにして歯止めをかけるか? 金融資本主義、市場至上主義は道義と節度を喪失しているからである」
となってしまった。
非制限用法だから「道義と節度を喪失していない金融資本主義、市場至上主義」の可能性を否定している(音楽家になっていない息子がいる可能性がないのと同じように)のだ!
だからこの英文だと、鳩山氏の意図は
「金融資本主義、市場至上主義は、道義と節度を喪失しているので、歯止めをかける」ということになってしまっているのである。
たかが「カンマ」で「意図がまるで異なる英語が出来上がってしまう」のだ。国際問題になってしまうほどに! 恐ろしいと思わないだろうか?
しかもだ!
読売新聞によると、ニューヨーク・タイムズに載った英文自体は「鳩山氏側から英訳」であるという。
↓
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090831-OYT1T01277.htm
↑この話がもし本当なら、もしこの英訳者が日本人だとしたら、その人の技量を疑う。
ここを読んでいる英語学習者は、ぜひ「関係代名詞の、制限用法と非制限用法の違い」を認識して欲しい。そのためにも「しっかり関係詞を学んで欲しい」と切に私は願う。
国際問題にならないために!
ソース↓
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/018fdd795763b4a72fce875f9ac20b76
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