Q-Eng

前の日記を書いている時、夫が毎日持ち歩いているバッグの中身を一つ一つ言っていくと、娘がそれにいちいち反応していた。

夫　「パソコン、パソコン電源、非接触型温度計、本、ウインドブレーカー」
娘　「ウインドブレーカーね。これは必要だよね。防寒にも雨具にもなるからね。」
夫　「ザックカバー。これは必須です。」
娘　「ああ、これはビニール袋で代用できるよ。だから私はヨーカドーの袋を持ってる。」
夫　「へえ、そうなんだ。それから名刺」
娘　「何それ。PETの袋にいっぱい入れてる。ねえ、名刺入れとか使わないの？」
夫　「名刺入れは別に持ってる。あと、手帳、接着剤、セロテープ、マスク、手回し発電機」
娘　「これは結構必要。私は持ってないけどね。」
夫　「電池。単３と・・・４と５も持ってる。」
娘　「3と4は私も持ってるけど、5は持ってないな。」
夫　「心拍計、鏡、裁縫道具、ばんそうこう」
娘　「ま、鏡とか裁縫セットとかばんそうこうは、身だしなみとして普通持ってるでしょう。」
夫　「カラビナ」
娘　「カラビナね。私も持ってるよ。何にっていうわけじゃないけどさ、何かひっかけるのにいいよね。私のはさ、かわいいハート形とか星型とかのじゃなくて、がっつり山用のだよ。」
夫　「東京都のごみ袋。えーと。45リットルかな。これは必須。いざとなれば防水、防寒に使用できるですよ。」
娘　「そうそう。これはすっごい大事だよ。服として着れるし、荷物にもかけられるし、ホント必需品だよね。」
夫　「そうなんですよ。これはねなんにでも使えるからねえ、便利なんですよ。」
（夫は私や娘に、「です」「ます」と敬語を使う。可哀そうに、自ら私たち二人より、自分の地位が低いのを自覚しているらしい。）
夫　「キャラメル。これは行動食。」
あーす　（行動食って、山でも行くんかい？）
夫　「筆記用具、分度器、消し板」
娘　「ああ、はいはい、消し板ね。漫画家さんで使う人いるんだよね。」
夫　「マーカー、ルーペ（細かい部品や商品の傷を見る時使用）、携帯用マルチコード」
娘　「あ、私も持ってる。」
夫　「三角スケール」
娘　「それはさすがに、作図する人しか持ってないな。」
夫　「パイロール」
娘　「ああ、それはお父さんの必需品だね。私は、マキロンとガーゼとばんそうこうは持ってるよ。」
夫　「水ペットボトル。これは必須です。お茶ではだめなんですよ。水は飲めるし、傷を洗うこともできますからね。」
娘　「そうそう。水は大事だよね。傷を洗えるし冷やせるしね。」
あーす　「二人とも洗うような傷をしょっちゅうつくってるのかしら・・・。）
夫　「レスキューシート」
娘　「確かに大事だけどビニール袋で代用できるよね。ビニール袋とかゴミ袋って最強だもんね。」
夫　「フェイシャルペーパー」
あーす　（え！？このおっさん、そんなもの持ってるの？ま、拭いてもきれいにならないけど、徹夜明けにでも使うのかしら？）
夫　「5.5mの幅広メジャー。5.5m。5.5mってね、普通持ってないんですよ。しかも幅広。2.5センチ。」
あーす　（なんかやけに5.5mとか2.5センチって強調してるけど、それがなんなのさ？）
娘　「私は、キーホルダーとしての１ｍのメジャーなら持ってるよ。」
夫　「ソーラーチャージャー」
娘　「ああ、私も持ってる。それがないと携帯とかアイポッド充電できないもんね。」
夫　「はさみ」
娘　「私、ペン型のはさみ持ってるよ。」
夫　「ミニ工具（十徳ナイフのようにいろいろついている）」
娘　「私もビクトリノックスのアーミーナイフ持ってるよ。山に持ってってたやつ。」
夫　「傘、ペンライト」
娘　「私はＬＥＤライト持ってるよ。今はちっちゃいキーホルダー型だけどさ、昔はヘッドランプ持ち歩いてたよ。ああ、昔って高校時代ね。小学校とかじゃないからね。お母さん、変な想像しないでね。」

（この親子、震災で停電してもヘッドランプして、行動食食べながらビニール袋を着て、けがしても水で洗ってばんそうこう貼って、徒歩で帰ってこられそうだな・・・・。）

夫　「あと、ウエストバッグね。カッター、方位磁石」
娘　「方位磁石は山の中じゃないから私は持ってないよ。」
あーす　（私の携帯にはついてるよ。）
夫　「爪切り」
あーす　（そういえば、夫が社内旅行に行った時、バスの中で社員のおばさんが「Aさん、爪切り貸してちょうだい。」って当然のごとく借りに来たって言ってたっけ。）
夫　「シャチハタネーム、ＵＳＢメモリー」
娘　「USBね。私も持ってる。」
夫　「輪ゴム、メモ用紙、カードルーペ（文章を読む時使用）、鍵、予備のお金、献血手帳」
娘　「私のは献血カードだよ。」
夫　「あたくしのはね、古いから手帳なんですよ。あと、万歩計」
娘　「それは携帯についてる。」
あーす　「私のにもついてる。目標の歩数に達すると、突然『パッパラパッパパー』ってなるの。」
夫　「フォーマカード」
あーす　「それ何？」
夫　「ええーとですね。これは・・・（わけのわからないことを説明し始める）」
娘　「つまりね、何もないところでパソコンをネットにつなぐもの。これでわかる？お父さんの説明長くてしかもお母さんにはよくわからないでしょ？」
あーす　「うん。わかる。」
夫「・・・・・・。あとね、消えるボールペン5色、芯だけ！」
（「芯だけ」を強調する。）
娘　「芯だけ！すごい！私のは普通のだよ。芯だけじゃなくて。」
夫　「4色ボールペン1本」
娘　「私は3色のを持ってるよ。」
夫　「デジカメの電池3個」
あーす　「なぜ3個なの？」
夫　「なんとなく」
娘　「私は4本持ってるよ。ヘッドホンに使うから。」
夫　「カード類（と、ジップロックに入った銀行カードとポイントカードを見せる）、定期券」
娘　「カード入れじゃないの？ジップロックなの？」
夫　「この方がかさばらないからね。」
あーす　「あれ？ペンライトとか持ってないの？」
夫　「それはポケットの中。ポケットにはですね、ペンライト、携帯、予備電池付き懐中電灯、完全防水デジカメ。これは水深４ｍ可能です。」

娘　「なんかさあ、お父さんって変な人だよね。こんなにいろいろ持っててさ。」

そう言いながら、二人の会話を聞きながら私がこの日記を書いているパソコンの画面を覗き込む。

・・・・・・そう？・・・・なんか親子で持ってる物がかなりかぶってると思うんですけど・・・・・。

娘　「ええ？全然違うじゃん、持ってる物。お父さんと私。ほらあ。」

え・・・。あの・・・、父と子でかなり共通した持ち物で話が盛り上がってましたけど・・・・。

娘　「違うよ。失礼な。おとうさんみたいな人と一緒にしないでよ。」

え・・・・？あの・・・・、何が違うんでしょうか・・・・？ほとんど一緒ですよ。

娘　「あのさ、何も返事しないで、パソコンに返事を打つの止めてくれない？」

すみません。言うより先に指が動いちゃうもんで。ああ、この華麗なブラインドタッチ。

娘　「あのさ！私が言うこと、全部書かないでよ。やだあ。もう。じゃあね、もう寝る。お休み。」

はいはい。お休みなさい。

かくして、親子の断絶など無い、あー助の、違います！あーす家のある日の家族の会話は終わったのでした。

ま、とにかく、地震があっても、台風が来ても、この親子は大丈夫そうね。