今日は「リスニング」について書きます。
おそらくこれが、ここを見ている多くの「英語が得意な人」には一番ピンとこない話なのではないかと思います。多くの英語が好きな方には「リスニング試験があるっていいことじゃないか」ぐらいに感じると思います。しかし私は違います。これが「最も忌々しき問題」と考えているのです。
センター試験ではすでにリスニング試験が導入されています。また最近は高校受験で多くの公立高等学校の試験で採用されています。センター試験も、高校入試もリスニングの平均点は悪くないのです。また、TOEIC(R)テストは半分がリスニング試験で、リーディングに比べるとリスニングのほうが平均点が高いのです。そして、おそらくまだ未確定の大学入学基準試験では、リスニングが占めるウェイトが高くなると予想されているのです。相対的にリーディングが占める価値が下がり、リスニングが占める価値が高くなるのです。
↑これだけ見ると「良いように見えてしまう」かもしれません。
1・高校入試やセンターでのリスニングの平均点は悪くない。
2・TOEICでもリスニングのほうがリスニングのほうが平均点が高い。
3・相対的にリスニングの価値が高まり、リーディングの価値が下がる。
⇒だったら点数が取りやすくなり、良いじゃないかー!
と考えやすくなっていると思います。
ところがどっこい! 私はそうは全く思っていないのです。
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理由
1・高校入試やセンターでのリスニングの平均点は悪くない。
↑これは比較的易しめに作られているから。
高校入試は単語レベルがかなり低いものになっています。音声スピードも遅い。音声は1度ではなく2度繰り返される場合が多い。
これが、新試験では「単語レベルも高く、音声スピードも速く、1度しか発音されない」…となることが予想されます。これだと果たしてどれだけ得点できるでしょうか?
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では、「単語レベルも高く、音声スピードも速く、1度しか発音されない」というTOEICについて考えてみましょう
2・TOEICでもリスニングのほうがリスニングのほうが平均点が高い
↑これは、英語が得意な人しか基本的に受けないから。
あなたは「数学検定」というものを受けたいでしょうか? ここを見ている人の多くは受けたがらないと思います。数学に興味がない人は数学検定なんか受けるなんて発想が皆無とだと思います。つまり TOEICを受ける人は基本的に「英語に興味がある人ばかり」になるわけです。
そして、私の見解によれば「英語が得意な人の多くは耳タイプ。英語が苦手な人の多くは意味タイプ」なのです。つまり、TOEICを受ける人の多くは「耳タイプ」である。だから必然的にリスニングのほうが点数が高くなるのです。
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3・相対的にリスニングの価値が高まり、リーディングの価値が下がる
↑つまり、「耳タイプには有利だが、意味タイプには不利である」ということであろう。リスニング問題が多くなり、その分、耳タイプさんは得点を多く取りやすくなるわけです。
耳タイプさんはきっと大喜びなのではないかと思います。
ですが、
何度も言うように「英語が苦手な人の多くは意味タイプ」なのです。
●耳タイプに極めて有利で、意味タイプに極めて不利!
だから、「英語が苦手な人はさらに苦しめられる結果になる」はずなのです。
どうでしょうか?
これじゃあ、英語が苦手な人はさらに得点が取れなくなります。だからますます英語を嫌うだけになる思います。
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●リーデイング対策は、古来より英文解釈法が提示され、文法解読法が編み出され、受験単語帳の登場で学習しやすくはなりました(おかげでレベルは上がりましたが)。
●しかし、リスニングの対策はどうでしょうか? 「CD教材やらネイティブと話す機会を設ける」ぐらいしか、対策らしい対策がないのが現状ではないでしょうか? それで「どれだけ英語が苦手な人のリスニング力が発達した」のでしょうか? 劇的に上がった例が1つでもありますでしょうか?
英語が苦手な人にとっては、リスニングの対策が最も難しいと思うのです。にもかかわらず、大学入試基準テストでリスニングが占めるウェイトが高くなる…
これでは英語が嫌いな生徒はやってもやってもリスニング力が上がらない。得意な人との差が開く一方! ただでさえ嫌いな英語を学ぶのは苦痛なのに、ますます苦痛になるわけです。
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月曜日です。
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