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hachisukaさんの日記

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2016年
12月26日
19:39 hachisukaさん

『Xperia Ear』は本当に音声だけですべてをこなせるのか?

  • その他
Xperiaといえば、Androidスマホの中でトップクラスのメジャーブランドだ。グローバルでのシェアは落ちているものの、その名は、日本だけでなく、海外にも広く知られており、Androidでは老舗といっても過言ではないだろう。そんなXperiaブランドを、スマホ以外の製品に拡大していくと発表したのが、2016年2月のこと。スペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congressで、ソニーモバイルコミュニケーションズは、「Xperia Ear」「Xperia Eye」「Xperia Agent」「Xperia Projector」の4製品をお披露目、スマートプロダクトというジャンルを開拓していく姿勢を表明した。

 このうち3製品は参考出展という位置づけで、製品化の状況は現在も未定だ。一方で、唯一の製品版として発表され、11月に発売されたのがXperia Earだ。Xperia Earは、一見すると、単なるBluetoothヘッドセットに見えるが、機能はそれを大きく上回る。本体には近接センサーや加速度センサー、ジャイロセンサーが内蔵されており、耳に装着するとニュースや天気、着信など、必要な情報を教えてくれる。音声での操作も可能な、いわばエージェントと呼べる存在だ。スマホの画面に目を落としながら毎日を過ごすのは、どこか不自然で、人々が前を向いて生活できるようにしたい―Xperia Earには、このような思いも込められている。

 ヘッドセット型のデバイスにインテリジェンスを持たせ、スマホの世界観を広げるというアプローチは、ソニーモバイルの独壇場ではない。12月には、アップルが「W1チップ」を搭載した「AirPods」を発売。こちらはSiriと連携して、ユーザーの行動をサポートする。サードパーティが出す製品としては、UQ mobileが取り扱う「APlay」も、同じジャンル。いずれも単純なヘッドホン、ヘッドセットを超えた仕組みを備えており、あえてジャンルにくくるとすれば「ヒアラブル」と呼ぶことができそうだ。その先駆けともいえるXperia Earの実力を、実機で検証した。

■ペアリングはタッチするだけでOK、耳に装着すると自動で音声が流れる

 Bluetoothヘッドセットは、初期設定が少々面倒。ペアリングと呼ばれる操作が必要になり、ボタンを長押ししなければならないなど、少々手間がかかる。Xperia Earはこうした煩雑さを、NFCで解消している。まず、アプリを起動し、Xperia Earを充電器から外す。すると、自動的に電源が入り、ペアリングの準備が始まる。ここで画面の指示に従い、本体をスマホにタッチするだけでペアリングは完了。NFCを使い、接続を簡単にしているのが特徴だ。

 ペアリングと初期設定を終え、Xperia Earを耳に装着すると、時間、ニュース、天気予報、不在着信、予定などを読み上げてくれる。Xperia Earには近接センサーが搭載されており、ここまではすべて自動で行われる。読み上げる項目が多いと思う場合は、ペアリングしたスマホ側のアプリで設定を変更可能だ。着信など、スマホの情報を確認する際はまず画面を点灯させ、ロックを解除したあと、通知やアプリをチェックするのが一般的だが、Xperia Earの場合、本体を耳に装着するだけでいい。大げさにいえば、情報を整理して届けてくれる、秘書のような存在といえるだろう。

 もちろん、装着のたびに毎回すべての情報を読み上げてしまうこともない。こちらが理解しているにも関わらず、何度も同じことを話す秘書は無能だが、Xperia Earは装着するタイミングや回数によって、読み上げる情報を変えているようだ。こうした点からも、Xperia Earがパーソナルエージェントを志向していることがうかがえる。

■音声操作機能は、対応アプリの少なさが課題

 ユーザーの側からXperia Earを能動的に使いたい場合は、ボタンを1回押す必要がある。ボタンを押すと「お話しください」という音声とお知らせ音が流れるので、その後に「○○さんに電話」や「メッセージ読んで」などと話しかければよい。電話の場合は、「○○さんに電話しますか?」と聞かれるので、OKなら首を縦に振ると電話がかかる仕組みだ。「はい」とわざわざ発声しなくてもいいのは、センサーで首の動きを検知しているため。誰もいないところに向かって話しかけなければならないため、人が多い屋外で使うのはためらわれるが、自然に操作できるのは評価できるポイント。単純なBluetoothヘッドセットでは実現できない機能といえる。

 ただし、筆者の使用環境では、なぜか電話を発信することができなかった。原因を調べてみたところ、どうやらIP電話アプリをインストールしていたためで、発信時に通常のダイヤラーを使うか、そのアプリを使うかの選択肢が画面に出てしまっていた。これはAndroidのインテントと呼ばれる機能で、OS側に実装されているため、Xperia Earからコントロールできない。この選択肢が出たところで通常の「電話」を選び、「毎回」を選択すると電話がかけられるようになったが、少々戸惑った部分でもある。こうしたトラブルは他のユーザーの利用環境でも起こりうるため、アプリ内などで告知しておいてほしいと感じた。

 メッセージの読み上げに関しては、精度が高く、日本語としてスムーズに聞き取ることができる一方で、残念ながら対応しているのがSMSのみ。他社のアプリを勝手に開き、中身の文章をXperia Ear側のアプリでのぞかなければいけないため、技術的に実現が難しい可能性はあるが、より利用頻度の高いGmailやLINEなどのアプリへの対応が望まれる。ほかにも、音楽を再生できたり、タイマーをセットしたりできるが、現時点では能動的に音声操作することは少ないと感じた。できることが限られているうえに、やはりスマホで操作した方が速いことが多いからだ。この点は、今後のアップデートに期待したい。

■着信の読み上げは正確で、スマホを取り出す必要がなくなる

 役に立ったと感じたのが、通知の読み上げ機能だ。こちらはSMS以外にも、LINEやGmail、Messenger(Facebook)、カレンダー、Twitterなどに対応している。通知が来ると、その内容を読み上げてくれるだけだが、日本語をかなり正確に音声にしてくれるため、聞いているだけできちんと内容を把握できる。Xperia Earを耳につけっぱなしにしておけば、即対応しなければならない電話などがかかってこない限り、スマホはポケットの中に入れっぱなしにしてもいい。スマホの画面に目を落とさないで済むようにしたいという、Xperia Earのコンセプトどおりの機能といえるだろう。

 筆者の場合、Gmailにプレスリリースが送られてくるため、特に15時ちょうどはメールが集中して届きがちだ。複数のメールを同時に受信した際は、読み逃しもあったため、この点は改善してほしいと感じた。また、特に読み上げる必要性のないメールの内容が延々と耳元に流れてくるのも、少々うっとおしいと感じた部分でもある。メールのフィルタリングをするのは簡単ではないが、たとえば指定したキーワードが含まれるメールだけを読み上げたり、登録した相手からのメールだけに反応するようにしたりと、何らかの対策はあるはずだ。届くメールの重要性を判別する機能は、ぜひ実装してほしい。

 また、実利用に際して、厄介なトラブルもあった。筆者は取材時などの録音にスマホを活用しているが、Xperia Earの通知読み上げがオンになっていると、その都度録音が中断されてしまう。これは、録音アプリ側の問題でもある。原因は通話がかかってくると録音が中断される仕様のためで、Xperia Earの通知読み上げを「ヘッドセットを使った通話」と判断し、録音が止まってしまったというわけだ。このトラブルを回避するには、Xperia Earを耳から外して使用を止めるか、通知の読み上げをオフにするしかない。会見中など、メールを凝視できない状況の中、耳元でその内容を読み上げてくれるのは便利だと思っていただけに、少々残念だ。

 もう一点残念なのが、音楽再生が片耳でしかできないところだ。これは、Xperia Earの企画の根幹に関わる問題で、アプリのアップデートでは解決できないところだが、アップルのAirPodsのように、両耳に装着することでステレオ再生も可能にしてほしかったというのが正直な感想だ。音楽を聴く際に、わざわざBluetoothのイヤホンに着け替えなければいけないのは面倒だし、かといって、そのまま再生すると音質が悪い。ウォークマンなどの生みの親で音楽に強いソニーの製品で、スマホのXperiaもこれまで音楽再生機能にこだわりを持ってきただけに、残念だと思う気持ちが強い。パーソナルエージェントという趣旨はわかるものの、両耳にイヤーピースをつければステレオ再生になるような仕様にすることも、技術的には可能だったはずだ。

 コンセプトはおもしろく、スマホの画面を見る頻度も少なくなるXperia Earだが、実際に使ってみると、機能面で、まだまだ粗削りなところが多い印象を受けた。音声操作の対応アプリを増やしたり、読み上げる通知をユーザー側がもう少しコントロールできるようにしたりといった機能追加は、ソフトウェアのアップデートで可能になる。もちろん、Xperia Earはまだスマートプロダクトの第一弾で、意欲的な製品でもあるだけに、ここで一刀両断にするつもりはない。使い勝手を向上させるためにも、ぜひ定期的な改善を続けてほしい。

【石野's ジャッジメント】
UI         ★★★
レスポンス     ★★★★
バッテリーもち   ★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
アプリの数     ★★★
質感        ★★★★
オリジナリティ   ★★★★★
*採点は各項目5点満点で判定

取材・文/石野純也
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